2022年09月23日

2022年 第 37 週(2022/9/12~2022/9/18)

【今週の注目疾患】
■デング熱
 2022 年第 37 週に県内医療機関よりデング熱が 1 例報告された。
当該患者は海外渡航歴があった。
2022 年の累計は 2 例となった。

 2013 年から 2022 年第 37 週までに県内ではデング熱の報告が 150 例あった。
性別では男性 94例(63%)、女性 56 例(37%)で男性が多かった。
年代別では 30 代が 43 例(29%)と最も多く、次いで 20 代 27 例(18%)、40 代 26 例(17%)であった。
病型別ではデング熱が 148 例(99%)、デング出血熱が 2 例(1%)であった。
推定される感染地域は国外が 143 例(95%)で大半を占めており、国内感染の 7 例(5%)は全て 2014 年の症例であった。
国外の推定感染地域は 7割が東南アジア地域、南アジア地域であった。

 2022 年は東南アジア地域の複数の国でデング熱の大規模な流行が報告されている。
マレーシアでは 2022 年第 27 週時点で累計 26,420 例の症例が報告されており、2021 年同週時点の累計報告数 14,715 例より 1.8 倍増加していた。
フィリピンでは 1 月 1 日から 6 月 25 日までに 64,797 例報告されており、2021 年の同時点の累計報告数 34,074 例より 1.9 倍増加していた。シンガポールは 2022 年第 26 週時点の累計報告数が 18,218 例であり、2021 年同週時点の 3,386 例より 5.4倍増加していた 1)。

 昨年は国内に輸入されるデング熱の症例数は低調だったが、今年は世界的な新型コロナウイルス感染症の制限緩和等による国内外の往来増加に伴い、輸入デング熱の症例数は最近増加傾向にあるため、今後の発生動向には注意が必要である 2)。

 デング熱はデングウイルスの感染によって生じる感染症である。
デングウイルスはフラビウイルス科フラビウイルス属に分類されるウイルスであり、1~4 型の 4 つの血清型からなる。
主な媒介蚊はネッタイシマカおよびヒトスジシマカであり、ヒト→カ→ヒトの感染環により自然界に存在している。
現在、ネッタイシマカは日本国内には分布してないが、ヒトスジシマカは北海道を除く広範な地域に分布している 3)。

 デングウイルスに感染した場合、約 50~80%の割合で不顕性感染に終わると考えられている。
感染して 3~7 日後に突然の発熱で始まり、頭痛特に眼窩痛・筋肉痛・関節痛を伴うことが多く、食欲不振、腹痛、便秘を伴うこともある。
発症後、3~4 日後より胸部・体幹から始まる発疹が出現し、四肢・顔面へひろがる。
これらの症状は 1 週間程度で消失し、通常後遺症なく回復する 4)。
 デングウイルス感染後、デング熱とほぼ同様に発症し経過した患者の一部において突然、血漿漏出と出血傾向を主症状とするデング出血熱となる。
重篤な症状は、発熱が終わり平熱に戻りかけたときに起こることが特徴的である。
患者は不安・興奮状態となり、発汗がみられ、四肢は冷たくなる。
極めて高率に胸水や腹水がみられる。
また、肝臓の腫脹、補体の活性化、血小板減少、血液凝固時間延長がみられる 4)。

 デング熱は蚊を介して感染する。
発症した人が蚊に刺されると、その蚊にウイルスが移り、その蚊に刺された他の人に感染する。
そのため、デング熱の予防には蚊に刺されないようにすることが重要である。
肌を露出しない長袖、長ズボンを着用する、素足でのサンダル履きを避ける、白など薄い色のシャツやズボンを選ぶ、虫よけスプレーや蚊取り線香を使用する、などの対策がある。
また、国外からの帰国時に発熱など心配な症状がある場合や体調に不安がある場合には、空港や港の検疫所に相談する。
デング熱の潜伏期間は 2~14 日間である。
帰国後に症状がでた場合には、速やかに近くの医療機関を受診し、渡航先や渡航期間、渡航先での活動を伝えることが重要である 5)。

■手足口病
 警報発令継続中(警報開始基準値 5.0 終息基準値 2.0)
2022 年第 37 週手足口病定点当たり報告数 県全体 3.12 (人) 前週 3.72(人)から減少
第 27 週に警報開始基準値である定点当たり報告数 5.0(人)を上回って以降、県内では警報発令状況が続いており、感染予防として手洗いの励行等が重要である。

■参考
1)WHO 西太平洋地域事務局:Dengue Situation Update 650 14 July 2022
>>詳細はこちら
2)国立感染症研究所:日本の輸入デング熱症例の動向について(2022 年 9 月 14 日更新版)
>>詳細はこちら
3)国立感染症研究所: IASR Vol. 41 デング熱・デング出血熱
>>詳細はこちら
4)国立感染症研究所:デング熱とは
>>詳細はこちら
5)厚生労働省:デング熱について
>>詳細はこちら

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和4(2022)年9月21日更新)