2022年 第 12 週 ~バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)感染症~

2022年04月01日

今週の注目疾患  
2022年 第 12 週(2022/3/21~2022/3/27)
【今週の注目疾患】

≪バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)感染症≫
 2022 年第 1 週から第 12 週までに県内医療機関からバンコマイシン耐性腸球菌(以下、VRE)感染症の報告が 5 例あった。既に、2021 年の累計報告数 4 例を上回っている。性別では男性 4例(80%)、女性 1 例(20%)であり、男性が多かった。
年代別では、80 代 3 例(60%)、90 代 1例(20%)、100 歳以上 1 例(20%)であった。
保健所管内別では市川が 3 例(60%)、習志野が 2例(40%)であった。
菌が分離された検体は、尿 2 例(40%)、膿 2 例(40%)、胆汁 1 例(20%)で、菌種は全て Enterococcus faecium であった。
耐性遺伝子型は、1 例が vanB 型、ほか 4 例は未実施もしくは不明であった。

 VRE 感染症は 2012 年から 2022 年第 12 週までに 30 例の報告があった。
報告数は 2012 年の 5例以降、2013 年から 2019 年までは 1 例から 3 例程度で推移していた。
しかし、全国的に過去最多の報告数であった 2020 年1)は、県でも 6 例に増加した。
 性別では男性 17 例(57%)、女性 13 例(43%)であり、男性が多かった。年代別では、80 代が 9 例(30%)で最も多く、次いで 70 代 8 例(27%)であった。
60 代以上が 87%と大部分を占めるが、30 代、40 代の報告もあった。
 菌が分離された検体は、通常無菌的であるべき検体では血液が 14 例(47%)、腹水が 1 例(3%)であった。
通常無菌的ではない検体では尿が 8 例(27%)と最も多く、次いで膿が 3 例(10%)であった。
菌種は記載のあった25例のうちE. faeciumが22 例(88%)と最も多く、E. casseliflavusが 2 例(8%)、E. faecalis が 1 例(4%)であった。
耐性遺伝子型の記載があったものは 7 例でvanC 型 4 例(57%、検出検体:全て血液)、vanB 型 2 例(29%、検出検体:血液、膿)、vanA型 1 例(14%、検出検体:膿)であった。

 VRE 感染症は、バンコマイシンに耐性を示す腸球菌による感染症である。
VRE のヒトからの分離報告は、1988 年にヨーロッパで、続いて 1989 年に米国で報告された。
それ以降、米国では急速に VRE が医療機関に広がったとされている。
1990 年代までは高度医療の普及した米国・欧州からの報告が多かったが、現在までには世界中ほぼすべての地域に広まった。海外では、VREの新たな流行株の出現が報告されており、過去の疫学にとらわれることなく動向を注視し、現在の感染のリスク因子・分子疫学解析を行い、それに基づく対策を実施する必要がある1)。

 日本においては、VRE感染症は1999年4月から感染症法に基づく全数把握対象疾患となった。
報告数は 2011 年から 2019 年まで年間 100 例未満で推移してきた。
しかし、2020 年は 135 例とこれまで最多であった 2010 年の 120 例を超えた。
届出菌種の推移から、これらの増加の多くがバンコマイシン耐性 E. faecium によるものと推測されている1)。

 腸球菌属はグラム陽性球菌であり、腸管や環境に常在し、健常人の便培養から分離され、尿検体に混入することもある。
日和見病原体であり、高齢者、糖尿病、悪性腫瘍、心疾患、手術後患者などの感染防御能の低下した易感染宿主に菌血症、心内膜炎、尿路感染症、腹腔・骨盤内感染症などの感染症を引き起こす。
中でも、菌血症、心内膜炎は重症感染症であり、E. faecium による菌血症は致命率が高い。
セフェム系薬やカルバペネム系薬、アミノグリコシド系薬に自然耐性を示す腸球菌による感染症において、バンコマイシンは極めて重要な抗菌薬とされている1)。

 厚生労働省は VRE 感染症の届出があった際には地方衛生研究所等での試験検査に努めることとしている2)。
また、保菌者も含め 1 例目の発見をもってアウトブレイクに準じた厳重な感染対策を実施するよう求めている3)。

 各施設における感染拡大防止には、全ての患者に対して感染予防策のために行う標準予防策(手洗い、手袋・マスクの着用等が含まれる)と必要に応じた感染経路別予防策(接触予防策)を実施する。
手指衛生については、手洗い及び手指消毒のための設備・備品等を整備する。
手洗いは患者や患者周辺の物品に触れる前後で行う。
接触予防策には個室管理が望ましく、標準予防策に加え、室内に入る際には手袋及びビニールエプロン(ガウン)を着用する3)、4)。

 また、疫学的にアウトブレイクと判断した場合には、院内感染対策委員会又は感染制御チームによる会議を開催し、疫学的調査を開始するとともに、厳重な感染対策の実施(患者のすみやかな隔離、周辺の接触者や環境へのスクリーニング検査の実施等5))が重要となる3)。

■参考
1)国立感染症研究所:IASR Vol.42 No.8(No.498)August 2021
>>詳細はこちら
2)カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)感染症等に係る試験検査の実施について
(厚生労働省通知平成 29 年 3 月 28 日健感発 0328 第 4 号)
3)医療機関における院内感染対策について
(厚生労働省通知平成 26 年 12 月 19 日医政地発 1219 第 1 号)
4)AMR 臨床リファレンスセンター:標準予防策と感染経路別予防策
>>詳細はこちら
5)感染症教育コンソーシアム:中小病院における薬剤耐性菌アウトブレイク対応ガイダンス
>>詳細はこちら

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和4(2022)年3月30日更新)

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