2022年 第 10 週 ~破傷風~

2022年03月18日

今週の注目疾患  
2022年 第 10 週(2022/3/7~2022/3/13)
【今週の注目疾患】

≪破傷風≫
 2022 年第 10 週に県内医療機関から本年 1 例目となる破傷風の報告があった。
患者は予防接種歴有り(接種回数不明)の 10 代である。
 2012年から2022年第10週に県内では63例の破傷風の報告があり、性別では男性35例(56%)、女性 28 例(44%)で男性が多い。
年代別では 70 代が最も多く 26 例(41%)、次いで 60 代と 80代がそれぞれ 11 例(17.5%)であり、60 代以上の患者が全体の 79%を占めた。
一方で、沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン(沈降 DPT)が定期接種となった 1968 年以降に出生した患者(現在53 歳以下)の症例も 9 例(14%)あった。
 感染経路別では、創傷感染(動物の咬傷や転倒による擦過傷等)が 45 例(71.4%)で最も多い。
次いで、その他(不明、明らかな創傷がない等)が 14 例(22.2%)、針等の鋭利なものの刺入による感染(竹や枝、釘が刺さった等)が 4 例(6.4%)であった。
 ワクチン接種歴ありと記載のあった患者は 6 例(10%)であり、60 代が 3 例、30 代が 2 例、10 代が 1 例であった。
なお、接種回数は不明である。
ワクチン接種歴なしと記載のあった者は 8例(13%)で 70 代が 7 例と 90 代が 1 例であった。
その他、不明もしくは記載なしが 49 例(77%)であった。

 破傷風は、破傷風菌が産生する神経毒素による神経疾患である。
破傷風菌が作る毒素は抑制性神経伝達を減少させ、神経を過活動の状態にすることで筋肉の痙攣やこわばりを起こす1)。

 症状は筋の痙攣、硬直である。
脳神経支配の筋においては、開口障害、痙笑(顔面筋の痙攣により笑っているようにみえる症状)、喉頭痙攣、嚥下困難等として認められ、開口障害は初期症状として多い。
四肢や体幹の筋においては、四肢、腹部、傍脊柱の筋群における硬直および疼痛を伴う痙攣、さらには後弓反張として認められる。
交感神経の過活動により自律神経が不安定になり、頻脈、徐脈、高血圧、低血圧、多汗などの症状が認められる。
意識は保たれる。致死率は 10~20%である1)。

 破傷風菌は芽胞の状態で土壌などの環境に広く分布する。
破傷風菌の芽胞は創傷から侵入し、嫌気状態の創傷部で発芽・増殖し、毒素を産生する。
人から人へ感染することはない。ワクチン接種を受けていない女性から出生した新生児において、非衛生的な臍帯処置行われた場合、新生児が破傷風を発症する可能性はあるが、日本では 1995 年の 1 例以降、死亡例の報告はない1)。
 潜伏期間は 3~21 日であり、平均は 10 日である。
新生児破傷風の場合は、生後 4~14 日間であり、平均は 7 日である。
創傷部位が中枢神経系から近ければ、潜伏期間が短く、より重篤な症状、合併症、死亡の可能性が高くなる傾向がある1)。

 破傷風は自然感染では免疫が誘導されないため、ワクチンによる発症予防が非常に重要である。
現在、定期接種第 1 期(生後 3~90 か月に至るまでの間)に沈降精製百日せきジフテリア破傷風不活化ポリオ混合ワクチン(沈降 DPT-IPV、四種混合ワクチン)を 4 回接種し、第 2 期(11~12歳)に沈降ジフテリア破傷風混合トキソイド(沈降 DT、いわゆる二種混合ワクチン)を 1 回接種する1)。
 1968 年の破傷風ワクチン定期接種開始以降、小児における破傷風患者は激減し、患者の多くは定期接種開始前に出生した者である。
しかし、第 2 期接種を忘れてしまうなど定期予防接種のスケジュールに沿ったワクチン接種を受けていない場合、10~20 代においても発症する可能性がある2)、3)。
 また、破傷風の発症予防には、前回の接種後から 10 年経過後の沈降ジフテリア破傷風トキソイド(沈降 DT)あるいは沈降破傷風トキソイドの追加接種が重要である2)。

 2011 年 3 月 11 日の東日本大震災では、2011 年 3 月~2012 年 3 月の期間に、震災に関連した破傷風症例計 10 例の届出があった4)。
破傷風菌は土の中など広く環境に分布しているため、誰でも破傷風にかかる可能性があり、その予防には創傷部の迅速で適切な処置と、定期接種を確実に受けることが重要である。
創傷を負った場合には、ワクチン接種歴から判断して、破傷風の予防処置を行う。
創傷部を洗浄し、泥や異物、壊死組織を取り除き、必要に応じて破傷風トキソイドを接種する。
汚れていない浅い傷で、破傷風トキソイドを含むワクチンの 3 回以上の接種歴があり、かつ最後のワクチン接種から 10 年を経過していなければ、この傷によるワクチン接種は不要となる。
定期接種が未接種あるいは前回の接種から 10 年が過ぎている場合には、破傷風トキソイドの接種を検討されたい。
また、自分自身や家族がいつ何回、破傷風トキソイド接種を受けたのか記録しておくことも重要である1)。

■参考
1)国立感染症研究所:破傷風とは
>>詳細はこちら
2)国立感染症研究所:破傷風の小児例
>>詳細はこちら
3)国立感染症研究所:2期の DT が未接種であった 10 代の破傷風発症事例
>>詳細はこちら
4)国立感染症研究所:IDWR 2012 年第 45 号
>>詳細はこちら

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和4(2022)年3月16日更新)

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